<内容>
野沢雅子、小原乃梨子、田中真弓、緒方恵美、高山みなみ……。
アニメの少年を女性の声優が演じることに、違和感はまったく感じない。
しかしこれは、ディズニーアニメで少年を子どもが演じるのとは対照的な、日本アニメの特徴だ。
こうした配役はどのようにして生まれ、アニメ文化に何をもたらしてきたのだろうか。
少年を演じる女性声優を軸にアニメと声優の歴史をたどり、日本が独自に育んできたアニメと声の文化を描き出す。
子役起用が難しいという制約から始まった少年に女性声優をあてる配役は、魔法少女もの、アイドルアニメ、萌えアニメ、BLなどのアニメの変遷とともに実に多様な広がりを見せている。
性も年齢も超えて恋愛対象としての「イケボ」の青年まで演じる女性声優は、外見とキャラクターとの差異やジェンダーのズレから、視聴者に独特の欲望を喚起している。
みんなに愛される少年から女性が恋する青年までの女性声優を切り口に、アニメと声優のメディア史を考察する。
目次
序章 少年役を演じる女性声優――リミテッド・アニメーションと声
1 先行研究と残された課題
2 『ピノキオ』と『鉄腕アトム』
第1部 少年役を演じる女性声優の歴史
第1章 連続放送劇と民主化
1 敗戦後のラジオの役割
2 民主化推進のための連続放送劇
第2章 子どもを演じること――木下喜久子と『鐘の鳴る丘』
1 子どもの声の需要の高まり
2 子役起用の難しさ
第3章 他者との同期――一九五〇年代テレビ黎明期における声の拡張
1 声だけの演技から映像に合わせた声の演技へ
2 タイミングを合わせる吹き替えの演技
第4章 アニメのアフレコにおける声優の演技
1 読点「、」と三点リーダー「…」
2 身体感覚を声に込める
第5章 東映動画という例外――一九五〇年代末から六〇年代の子役の起用
1 東映の影響
2 東映動画のアニメ制作環境
第2部 ファンとの交流と少年役を演じる女性声優
第6章 アニメ雑誌とスター化する声優――一九七〇年代の変化
1 若者アニメファンの台頭
2 声優をスターにしたアニメ雑誌
第7章 声優とキャラクターの同一視――一九八〇年代の新人声優たち
1 キャラクターの顔を声優に仮託する
2 アイドルアニメと新人女性声優の親和性
第8章 「萌え」と「声のデータベース」――一九九〇年代におけるキャラクターの声
1 「萌え」というキャラクターへの愛
2 「萌え」と声
第9章 「萌え」の時代に少年を演じること
1 殻を打ち破った演技
2 女性を魅了する女性声優の声
3 女性声優はどこまで性を越境できるか
第10章 受け継がれていく「ずれ」と「萌え」――キャラクターに仮託された理想
1 継承されるジェンダーを攪乱する声
2 女性ファンの受容
補論 アニメ関連領域から再考する少年役を演じる女性声優
1 声優の性別と受容者の期待
2 視覚と聴覚
3 声の力
おわりに
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石田美紀 /
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